アイドルグループ解散の後日談
とある5人のアイドルグループが解散したX年後の話を、某アイドルアニメ風に妄想してみた。
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◯某テレビ局・凛の楽屋
木村凛が鏡に向かって座り、歌番組への出演スタンバイをしている。その横には別番組の衣装を来た中居卯月が立っている。
凛「卯月、それ本気で言ってんの?」
卯月「もちろんですっ!」
凛「・・・」
卯月「どうですか?凛ちゃん!」
凛「・・・無理」
卯月「・・・え?」
凛「無理だよ」
卯月「そんな!凛ちゃん、お願いです。もう一度よく考え・・・」
凛「(遮って)ごめん、私、もう本番だから」
立ち上がりその場を去る凛。
◯海岸
バラエティのロケ撮影の休憩時間。香取きらりが座って休憩している横に、私服の中居卯月が立っている。
きらり「卯月ちゃん、それを言うためにわざわざココまで来たにぃ?」
卯月「はい!」
きらり「・・・あのね、きらりね、卯月ちゃんが来てくれて、すっごくはぴはぴしたよ☆ ・・・でもにぃ、そのお話にすぐにウンって言うのは難しくて・・・ホントにごめんにぃ!」
◯ライブ会場・控室
草なぎアナスタシアがリハーサルのタイムラインを確認している。その横に私服の中居卯月が立っている。
アナスタシア「ウヅキ、そんなこと、かんがえてたデスカ?」
卯月「はい。結構前から、考えてたんです」
アナスタシア「・・・」
卯月「どうですか? アーニャちゃん」
アナスタシア「Извините, пожалуйста...」
◯事務所
新しいゴスロリ服の衣装合わせをしている稲垣蘭子。その横に稽古着の中居卯月が立っている。
蘭子「同胞よ・・・」
卯月「蘭子ちゃん、考えてみてくれませんか?」
蘭子「・・・悪魔と交わした契約を反故にすれば、大きな災いが降りかかる」
◯稽古場
稽古着のまま鏡の前に座り込み呆然とする中居卯月。そこに木村凛が入ってくる。
凛「卯月・・・」
卯月「あ、凛ちゃん」
凛「みんなに言ったんだって?」
卯月「はい」
凛「で? みんなはなんて?」
卯月「(首を横に振る)」
凛「・・・そっか。やっぱり無理なんだよ。再結成なんて」
卯月「無理なんかじゃないです!」
凛「だって私たち、すごく大勢のファンの声を押し切ってまで解散したんだよ!散々考えてそうしたんじゃない。それを今更、再結成なんて・・・生半可な気持ちじゃできない」
卯月「生半可じゃありません!!」
卯月の大声に驚く凛。
卯月「あ、凛ちゃん、ごめんなさい。でも私、生半可な気持ちなんかじゃ絶対ないです。だからもう一度だけ、もう一度だけ5人で話すチャンスをくれませんか?」
◯稽古場(日替わり)
中居卯月・木村凛・香取きらり・草なぎアナスタシア・稲垣蘭子の5人が集まり、稽古場の床に座って話している。
きらり「卯月ちゃんは、どうして急に、そんなこと考えたにぃ?」
卯月「急にじゃないんです。本当はずっと考えてたんです」
アナスタシア「ワタシタチ、とてもかんがえてカイサンしました。それはマチガイだったということですか?」
卯月「いえ、そうじゃないんです。あの時はあれがベストだったと思います」
蘭子「時に逆らい壊れし魔力の器を復活させるは禁忌の術。同胞よ、汝の心結界は我が闇の力をもってしても破ることができぬ」
凛「卯月、ちゃんと説明して」
卯月「・・・私、みんなと会えて、なりたかったアイドルになれて、ずっと夢見てるみたいでした。解散は悲しかったけど、あの時は5人揃ってSMAQとしてキラキラすることができなかったし、そんなの、みんなも見ているお客さんも辛かったと思うから・・・だから決断は間違ってなかったと思います。でも、SMAQとしての活動がなくなって、ひとりになって、初めて気づいたことがあるんです。私、アイドルとして自分がちゃんとキラキラできてるかなってことばかり考えてたけど、もしかしたら本当は、ファンの方やテレビの向こうの人たちをキラキラさせたかったんじゃないのかなって。私が昔、テレビの前で憧れて夢を持ったみたいに、そういう人を作りたかったんじゃないのかなって。私たちはあの頃より大人になったし、きっと前とは違う輝き方ができると思うんです。5人の個性がぶつかって重なって、より大きな影響力になると思ったんです。私、またキラキラしたいんです。今度は、見ている人を包むような、温かいキラキラをみんなで作りたいんです」
きらり「卯月ちゃん・・・きらりね、卯月ちゃんの気持ち、すっごく伝わったよ。ねぇ、あのね、ちょっとだけ、ギューッてしてもいいかなぁ?」
卯月「え? あ、はい」
きらり「(卯月を抱きしめながら)やってみよっか?」
卯月「・・・はいっ!」
アナスタシア「спасибо. ウヅキ。なんだかとてもタイセツなこと、きづかされました。ウヅキのいったキラキラ、ステキです」
卯月「アーニャちゃん!」
蘭子「我が闇の力は・・・ではなくて、えっとあの・・・私もまたみんなとやりたい!です!」
卯月「蘭子ちゃん、ありがとう」
凛「私は・・・私はわからない。卯月の言ってること」
きらり「凛ちゃん、どうしたにぃ?」
凛「だってあんなに悩んで考えて話し合って解散決めたのに・・・だったら私は、最初から解散なんてしたくなかった!」
稽古場から出ていく凛。
卯月「凛ちゃん・・・」
◯凛の実家
花屋を営んでいる凛の実家。店先には卯月の姿。凛が母親に呼ばれて家から出てくる。
凛「家まで来たって、考えは変わらないから」
店先の花を楽しそうに見る卯月。
卯月「花って、楽しいですね。見てるだけで気持ちが優しくなります」
凛「・・・」
卯月「(歌って)花屋の店先にならんだ〜 いろんな花を見ていた〜♪」
凛「! ちょっと卯月、ふざけないで!」
卯月「私、この歌をうたうときはいつも凛ちゃんのお家を思い出してたんですよ」
凛「え・・・?」
卯月「ほら、覚えてますか、私と凛ちゃんが初めて会ったのがこの場所でした」
凛「・・・そうだったかもね」
卯月「あの時はまだ私、凛ちゃんを凛ちゃんだって知らなくて(笑う)」
凛「当たり前でしょ。初めて会ったんだから」
卯月「運命って、あるんですよね」
凛「・・・」
卯月「私のアイドルの原点なんです。この場所と、凛ちゃんは。だからあの時のことはずっとずっと大切にしてます」
凛「・・・」
再び店先の花を見始める卯月。
卯月「本当に迷っちゃうな。(歌って)がんばって咲いた花はどれも きれいだから仕方ないね〜♪ あ、これにしようかな。これください」
一輪の花を手に取って凜に手渡す卯月。
凛「ラナンキュラス? 卯月らしい」
卯月「私用じゃなくて、凛ちゃんにプレゼントです」
凛「え? ・・・ラナンキュラスは私にはちょっと可愛すぎ」
卯月「ううん! ぴったりです!」
お代を渡して嬉しそうに去る卯月。その場に取り残されるラナンキュラスを手にもった凛。
◯コンサートホール
大規模なコンサートホール。客席は溢れんばかりのお客さんで埋め尽くされている。
舞台の真ん中に卯月が一人たち、ピンスポットが当たっている。
お客さんに向かって何かを話す卯月。
卯月がさっと手を上げると、舞台の全体照明がパッとつく。
舞台上にはきらり・アナスタシア・蘭子、そして凛の姿。
曲のイントロが始まる「世界にひとつだけの花」
照明の中でキラキラと輝く5人。
ペンライトで埋め尽くされてキラキラと輝く客席。
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