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これまでの職の話をしよう season3 ーテーマパークのアルバイト2ー

いくつかバイトの話を書いてきたが、私のアルバイト経験のハイライトはこれまでに書いたどれでもない、ディズニーリゾートでのキャスト経験である。

 

この経験をクチにすると大概の人が興味を持ってくれるが、これまでにブログに記述しなかったのには訳がある。単に出し惜しみをしていたわけではない。

みんな一度は噂を耳にしたことがあると思うが、ここのアルバイトはアルバイトと言っても仕事に対するモチベーションが非常に高く、業務に向かう姿勢も実際の業務実態もとてもレベルが高かった。ので、笑い話になるようなネタがないのである!

また、小心者な私はゲストの安全と夢を守ることにいっぱいいっぱいで、常に多大なる緊張感の中で仕事をしていたので、おもしろ事象を発見する余裕もなかった。

(正直、ワニワニパニックとは比べ物にならない緊張感だった。)

 

だからと言って書かないのももったいない貴重な経験だったので、なぜディズニーはアルバイト従業員のモチベーションを保てるのか、をノウハウ調にまとめてみたいと思う。

先に謝っておくと、無職がわかったようなことを言ってごめんなさい。

 

1. サービス提供の根幹となる基本理念の共有が徹底されている

大小に関わらずどんな組織にも言えることだが、複数の人間を動かして何かしらの目的を達成しようとする際、まず最初に動作の基本となる考え方・理念・ビジョンを全員で共有することは非常に重要なことである。

マネジメント系の研修などでまず教えられることだ。

しかし、組織が大きくなればなるほどそれを徹底するのは難しいし、事業が大規模になるほど基本理念がブレる場合もあるかもしれない。理念の共有は、当たり前のようで実際は中々難しい。だからわざわざマネジメント研修で教えるのだろう。

 

ディズニーがすごいのは、末端のアルバイトまで徹底して、創始者ウォルト・ディズニーの理念を叩きこむ点だ。

採用が決まった後の一番最初のオリエンテーションで、この理念を丸一日かけて共有するのである。

この一日でディズニークオリティーの裏側に流れる考え方を深く知ることで、自分もこの目的を達成する一員として行動したい、この理念に反するような行動をしたくない、と自然と思うようになる。

ひとつひとつの細かな動作を教えるまでもなく、この時点で行動の指針が築かれるのである。実際に現場に出ておどろいたのだが、すべての従業員が、ミスをした際には、指摘されるまでもなく本人が最も早く深く反省していた。上からの注意や指摘が必要ないんじゃないかと感じたくらいだ。個々人の中に「何が成功で何が失敗か」という基本的な行動指針が出来上がっていたからこそ実現される状況だったと思う。

 

もし理念に共感できない場合は最初のオリエンテーションの時点で辞めればよいし、その意味でも一番最初に根幹の考え方を共有するのは、雇用する側にとってもされる側とっても非常に有益なやり方だと感じる。 

アルバイトにそこまで企業理念を伝えるところは、他にはほとんど存在しないのではないだろうか。少なくとも自分の経験では、顧客にサービスを直接提供するタイプのアルバイトだった飲食店や他のテーマパークでも、そこまでやるところはなかった。

 

2. 評価制度が充実している

ディズニーのアルバイトは、個々人の仕事への評価制度が充実していた。それも「悪い点を指摘」よりも「良い点を褒める」をベースとした評価制度が多かったように思う。

突出した良いサービスや理念に沿った良い行動をすれば、その場で褒められるだけではなく、組織から表彰される。

自分の周囲で起きたエピソードとしては、パーク内である母親同士がケンカを始めて、もはや殴り合いになろうかという勢いになった際に、間に入って(物理的に身体を間に入れて)制し、なだめた先輩がおり、彼女は表彰を受けていた。

その先輩を本当に凄いと思ったし、表彰されて然るべき対応だったと思う。

ほとんどのキャストが、ゲストが喜んでくれるのが一番、という想いで働いているのは間違いないが、その想いを保つ支えとして少なからず「がんばれば、評価される」という事実が存在していたのだと思う。

ゲストの感情という形にならない成果を、形にしてフィードバックする仕組みが確立されていたことが、モチベーション維持の大きな役割を担っていたことは確かだろう。

 

3. 自分の仕事を振り返る習慣付け

毎日の仕事終わりに終礼を実施し、全員がその日の自分の仕事について良かった点や反省点を述べるのが決まりだった。

多くのアルバイトでは、「あー今日も疲れた〜。やっと上がりだ〜。」で一日の仕事が終わってしまうし、次に向けた反省点や自分の成長ぶりなどを特に意識することなく次の日が始まってしまうのではないだろうか。

しかし、ディズニーは違う。毎日毎日帰る前に、この対応は良かった、悪かったと、嫌でも自分の仕事っぷりを省みることになるし、それがあるからこそ業務中はどんなささいな行動にも「意思」が生じる。単なるルーチンワークとしてぬぼーっとやり過ごすことなどあり得ないのだ。

自分の仕事を振り返ることが習慣付くことで、個々人の中で、マイPDCAがグルグル廻り始める仕組みになっていたのだと思う。

 

4. 夢を壊さない

私が一番ビックリしたのはこの点だ。

かつて私が「ディズニーで働きたい」と話した際に、「ディズニーで働いて裏を見てしまうと夢が壊れそうで嫌だ」と言った友人が複数存在したが、全くその心配はないと言っても過言ではないと思う。(めっちゃ偉くなったらわからないけど。。。)

想像通り、アルバイトとして働いている人間の多くが自身もディズニーファンであった。というかディズニーマニアと言うべきかもしれない、というレベルの人がザラにいた。 そして彼ら(彼女ら)は、従業員になってからも、現在進行形でマニアであり続けているのだ。みんな年パス持ちで、シフトの合間にパークに遊びに行っては、感想を語り合って幸せそうにしていた。

キャストも大事なゲストの一人でもある、という考え方なのかどうかは定かではないが、とにかく夢を壊すような裏側は何一つ見ることはなく、むしろ夢をふくらませて働けるようになっていた。そういう工夫をしていたんだと思う。

まず従業員を自社サービスの一番のファンにすること、それがディズニークオリティーが保たれている最大の要因となっていることは間違いない。

 

もちろん、大人気テーマパークならでは、という点はあるかもしれないが、異業界の企業が全く参考にできない話ではないのではないだろうか。

 

何より、こんなに色々なことを学んだのに、就職した際に活かせなかった自分が情けない限りである。