これまでの職の話をしよう season2 ーシステムエンジニア2ー

私がシステムエンジニアとして働いていた年月の半分は、「レガシーシステム」を専門としていた。

レガシーシステムというはつまり古いシステムのことである。

正直私は英語が苦手なので、レガシーとオールドのニュアンスの違いなどよくわからないが、"システム"には"レガシー"がくっつく慣習にはかなり救われていたと思う。

だって、オールドというよりレガシーの方が大分かっこいい。

そんなわけで、私はレガシーシステム(古い技術を使ったシステム)をどうやって延命させるか、という研究開発を行なっていた。

 

喩えるなら、世間がAKB48で盛り上がっているこの時代に、ずっとおニャン子クラブについて考えていた。

大事なことなどでもう一度言う。おニャン子クラブである。

20〜30年前の話である。一周回って秋元康である。

 

新進気鋭のweb系企業に勤めている人々が、10年弱しか経過していないシステム、いわばモーニング娘。のことを「レガシー」と呼んでいるのを聞いた時には驚愕した。

私の中の認識では、楽曲の収録にデジタルなメディア(CD)を使用している時点で"レガシー"ではなかった。レコードの時代まで遡って初めて「レガシー」だった。

全盛期の様子を事細かに語れる人間がもはや容易に見つからない状況こそが「レガシー」だった。

まあでもそれは、業界共通の定義ではなかったようだ。

思えば平成生まれの若者が、モーニング娘。を古いと感じるのは当然といえば当然である。

 

さて、私が所属していたグループのミッションは、おニャン子クラブの残党をどのように延命させるか、を検討することであった。

もしかしたら、そんなことどうでもいい、興味ない、と思う人が多いかもしれない。しかし、現存する(元)おニャン子クラブメンバーの熱心なファンや、彼女らを支える周囲の人々にとっては重要な話なのである。

ということで、それはそれで意義のあるミッションであったことはご理解いただきたい。

 

世間が『総選挙でセンターが決まる!』とかいってざわめいている時、

私達は、元おニャン子11名の缶コーヒーBOSS CMへの起用に色めきだっていた。

(実際色めきだったのはこちら → COBOLクラウド http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2011/012700.html

 

世間が『じゃんけん大会!』とかいって浮き足立っている時、 

私達は、渡辺満里奈の第二子出産に沸き立っていた。

(実際沸き立ったのはこちら → visualCOBOL https://www.microfocus.co.jp/about/pressrelease/archives/2011/0303.asp

 

世間が『あっちゃん卒業!』とかいって騒然としている時、

私達は、国生さゆりの再婚に翻弄されていた。

(実際翻弄されたのはこちら → COBOLJavaに変換する技術 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120815/416081/

 

もはや作った人も存在せず、人間が解読することが難しいオルゴール用の楽譜しかない楽曲の解読をしたりした。

(16進数で書かれたメインフレームの画面定義体の解読をした。)

 

そんな経験を経て、周囲の多くの人々がよく知らないおニャン子クラブについて、少し詳しい知識を得られたことは大きな収穫だったと思う。

ただし、業界を離れた今、どこでそのニッチな知識を使えるかは甚だ疑問ではある。

 また何より、ごく限られた情報の中で諦めずに暗号めいたものを解読する根性が身についた。

期せずして考古学的スキルを身につけた貴重な経験であった。

 

このプロジェクトの直後に「モバイル端末の最先端技術を使ってどーのこーの」的なプロジェクトに投入され、地球上の時空の概念を超えた極度の時差ボケに悩まされたことも良き思い出である。

 

<おことわり>

あくまで喩え話であり、実際におニャン子クラブについて調査したわけではないので、おニャン子クラブに関するお問い合わせには対応いたしかねます。