くしゃみが父親に似ている

遺伝とは時に、親子の間に思いも寄らぬ類似点をもたらす。

私の場合、くしゃみがその一例だ。父親に激似である。

外でくしゃみをするときは、肉眼では捉えられない程度に私の中に存在している希少なぶりっこ力を総動員して、「っくしゅん」といった感じにかわいらしく(←※自称)抑えているが、そのタガが外れた家の中では

「ゔえ〜〜〜っっくしょいっっ!」

っとなる。完全に親父のそれである。というか自分の父親のくしゃみの生き写しである。

実家でくしゃみをすると兄弟に「お父さんかと思った」と言われるのだから折り紙つきだ。これぞ“そんなとこ似なくていいのに”の境地。そんなとこ似なくていいのにセレクション金賞。

 

私のあらゆる愚行に物腰柔らかく対応してくれる奇特な優しさの夫でさえ、このオッサン過ぎるくしゃみには苦言を呈する。さすがにそれは・・・とちょっと引かれる。

そうは言ってもゔぇ〜〜〜っっくしょいっっ!家の中くらいゔぇ〜〜〜っっくしょいっっ!思い切りゔぇ〜〜〜っっくしょいっっ!くしゃみしたいゔぇ〜〜〜っっくしょいっっ!

失礼、アレルギーが出てしまった。

要するに一首にまとめるとするならば、

そのくしゃみ ダメねとキミが言ったけど 7月6日もゔぇ〜〜〜っっくしょいっっ!

 

しかし実は、そんな私のくしゃみは恥だが役に立つ。

Siriを起動させることができるからだ。

どこをどう切り取れば「Hey, Siri」に聞こえるかは不明だが、とにかくくしゃみをすればSiriが起ち上がる。

窮地に追い込まれた時、敵に悟られずにSiriを通して外部と連絡を取ることが可能ということだ。

さらに言えば、先日こんなこともあった。

夫がSiriに「アラームをセットして」と話しかけると「何時にセットしますか?」とSiriが聞き返す。そんなやり取りを私は隣で聞いていた。

夫が「8時」と答えた瞬間、私は放った。「ゔぇ〜〜〜っっくしょいっっ!」

するとどうだろう。

Siriの画面には「8時hey」と表示され、Appleの技術を結集した高度な計算が繰り広げられたと思われる数秒の間の後、Siriは言った。

「8時半にアラームをセットしました」

 

敵に悟られずに時限を30分引き伸ばすことに成功したのだ。

 

お父さん、貴重な素質をありがとう。

 

ちなみに、上唇をまるめて前歯を出したビーバーのような表情をよくする、という極めて些細で意味不明な癖も父親譲りなのだが、コチラの方はまだ活用法を見いだせていない。