スタバは油断するとやられるので気をつけた方がいい
新しい年も3日ほど過ぎ、明日から仕事始めという方も多いだろう。私もそうだ。
このタイミングで唐突に昨年を振り返ると、私は昨年、結構スターバックスに行った。知人にスタバカードをいただいたことなどもあり、スタバに通う頻度が例年の平均を大幅に上回った一年だった。
そんな昨年の経験値から私が諸君に言い残せることがあるとすれば、あそこはチェーン店だと思って油断してると、一流の腕でもてなしてくる店員がいるから気をつけろ。ということだ。
以下に具体的な注意事項を述べる。
まず第一に気をつけるべきは目である。
一流の腕をもつ彼らはものすごくこちらの目を見る。目を見て会話をするというのはコミュニケーションの基本だし、多くの接客業で実行されていることだと思うのだが、彼らは何かが違う。なぜだろう。彼らの視線は、業務としての義務的なそれの域を越えていて、「え、私にそんなに興味ある?」と思わせるのだ。
私なんぞ、初対面でそんなに興味深げに顔を見られる経験は、駅構内であくび顔を見知らぬおじさんに見られた時くらいしかない。その時はちょうど改札を通っているタイミングで、SUICAに気を取られてあくび時に口を手で抑えるマナーを守れなかった私にも大きな落ち度があるのだが、そのおじさんはその後、改札からホームまでの短い道のりで4回私の方を振り返り、私の顔を見直していた。2度ならまだしも、4度って。4度見って。
話が逸れたが、とにかくそれくらい経験不足の私なので、スタバの店員さんの視線にはドギマギさせられる。思わず「僕と契約して専属バリスタになってよ」と言ってしまいそうになるほどのドギマギだ。あ、それはまどマギか。
とにかく目は気をつけろ。と言っておきたい。油断すると、心を撃ち抜かれるぞ。
次に、会話だ。
あれは11月だったか12月だったか。すごく寒い日となんだか温かい日を行ったり来たりするような天候が続いていたころだったと思う。その日は久しぶりにすごく寒くなった日で、シンシンと冷えた空気に包まれた夜だった。私がスタバでホットのスターバックスラテを注文すると、レジの店員さんが「今日は寒いですね」と声をかけてくれた。その瞬間、美容室などで美容師さんと話すのも苦手な私の体幹に、ピキッと緊張の稲妻が走る。気の利いた答えを返してこの店員と客の小洒落た会話を成功させなきゃ、という不必要な使命感が燃え始める。「そうですね」ととりあえず一言答えながら、脳みそを高速回転させてそれに続ける言葉を探し始める。
「雪が降りそうですね」いや、そんな予報は出てないし適当なことを言って混乱を招いてもな。
「空気の冷たさが鋭くて、肌をつんざくようですね」いやいや、ツンドラかっ。
「冬ですからね」いやいやいや、喧嘩売りたいのか私は。
などとシミュレーションしてる間に、店員さんの方が次の言葉を発した。「ラテのミルク、温めることもできますけど温めますか?」
その瞬間、私の心に南風が吹き、すべての思考を吹き飛ばす。そうか、この提案のための「寒いですね」だったのか、と全てを悟る。彼が発した何気ない日常会話は、決してこちらにコミュニケーションを強要するものではなく、寒いと感じている客に対するサービスの提案だったのだ。
もしこれが、単刀直入な「ミルク温めますか?」の一言だけだったとしたら、私はそれをマニュアル的な発言としか感じなかっただろう。ふーんスタバって、冬はそういうサービスしてるのね〜くらいにしか思わなかっただろう。
しかし「今日は寒いですね」「そうですね」のやり取りがついただけで、それはまるで、1日に1組しか客をとらないオーベルジュで熟練の老紳士が私にカスタマイズされたもてなしを提供してくれているような、そんな暖かく贅沢な気持ちにさせられたのだ。(実際の店員さんは若いのだが)
とにもかくにも、油断するとヤツはとんでもないものを盗んでいく。気をつけるべし。
そして最後に、気配りだ。
前述の「寒いですね」事変と同じ日、スターバックスラテを受け取るときに私は、レジでもらったレシートを後で捨てようと思ってグチャッと丸めて握っていた。
するとラテを作って渡してくれた店員さんが「捨てましょうか」と言って手を出すではないか。私は最初、何のことをいっているのかすぐに理解ができなかった。レシートのことだった。
なんてことだ。その時、ドリンク作製担当のその店員さんは、たくさん注文が入って忙しそうな時間帯だった。それなのに私がレシートを不要なものとして持っていることを察知して、わざわざ捨て代行を申し出てくれたのだ。私だって、振り返ればすぐゴミ箱がある位置にいたというのに。
それって普通に考えてアレやろ!気になってる相手にするレベルの気遣いやろーー!!!
興奮して似非関西弁も出てくるってものだ。
おわかりいただけただろうか。
どこでデューク東郷が狙っているかわからない。それがスタバだ。諸君も決して油断せず、十分注意してスタバを楽しんでほしい。