お祈りメールへの返信定型文

コレクターというのは通常、自分の愛するものを収集し、愛でるものだと思う。

しかし世の中には、意に反して自分の忌み嫌うものが自分のもとに集まってきてしまう場合がある。それが「不採用通知」だ。

いわゆる「お祈りメール」と呼ばれるそれを、私はこれまでの人生において、ドラゴンボールコミックス内でかめはめ波が放たれた数と同じくらい受け取ってきた。これはもう、かめはめ波を受けてきたと言い換えても過言ではない。

これだけ受けても慣れないのが、かめはめ波。もとい、不採用通知だ。

わかっているのだ。自分が不甲斐なさが招く結果であることは、わかっているのだ。そのことを受け止めて努力し、前向きに次に進まなければならないということも、わかっているのだ。だがどうしても、頭でどうキレイ事に収めようとしても、やはり受け取ったときには悲しみと怒りが沸いてくる。

「悲しみ」はまだわかる。自分が望んだことが叶わなかったのだから、本気であればあるほど悲しみが生まれて然るべきともいえる。しかしやっかいなのはもう一方の「怒り」という感情で、やり場のない、理不尽な、無駄なエネルギーに他ならない。

ではなぜこのメールはこんなにイライラさせるのか。それが「お祈りメール」という名の由来ともなった「今後のご健勝、ご活躍をお祈り申し上げます」というラストの一文にあると私は考える。

その他「ますますのご健勝を」「ご活躍とご健康を」など亜型は多数あれど、最終的には皆お祈りしてくれる。

わかっているのだ。日本語の形式的な挨拶をしめくくる定型文であることは、わかっているのだ。社交辞令であり、そこに大きな意味などないということも、わかっているのだ。普通の挨拶メールなら何の違和感もないし、むしろ私だって使っている。

だが、だが、である!

どんなに頭でそう収めようとしても、やっぱり不採用通知

お前、数行上に「貴意に添いかねる」って書いたじゃねーか、と。

たった今、私の今後のご活躍を真正面からシャットアウトしたばっかりじゃねーか、と。

その舌の根も乾かぬうちに「ご活躍をお祈りします」って、さすがに刹那に生きすぎだろ、と。

分かっちゃいるけど必殺の嫌味でトドメの一撃を刺しにきているように思えてしまうし、今年大流行した「落ちるは恥だが腹が立つ」とはまさにこのことである。

 

もうね、パンがないならお菓子を食べればいいじゃない。じゃないけどね、

社交辞令で矛盾する。それなら言わなきゃいいじゃない!?

 

そんなわけで、この行き場のないイライラ感を発散するため、これらのお祈りメールへの返信定型文を作成したので、就職・転職・その他選考への応募活動に勤しんでいる諸君におかれましては、ご自由にお使いください。

 

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株式会社◯◯

採用ご担当者 様

 

この度は、ご丁寧に選考結果のご連絡をいただきありがとうございます。

お忙しい中、私の今後の活躍を祈るお時間を割いていただけるとのこと、大変驚くと同時に感激しております。

採用説明会においては論理的思考が大切であると強調されておりましたので、そのことばかり重視しておりましたが、祈るというスピリチュアルな一面があることを知り、私の貴社への理解が不足していたと心より反省しております。

私のような愚者のために、時間を割いて祈りを捧げてくださる貴社に心より感謝すると共に、今後は貴社職員の皆様の業務のご負担が少しでも軽減されるよう、製品・サービスの利用を控えて参りたいと思います。

末筆ではございますが、貴社の今後のますますのご発展とご繁栄を心よりお祈り申し上げます。

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