非美人のメリット

私は、顔の造形や表情にちょっとした癖・特徴があるらしく、あらゆる人生のステージで「いつもぼーっとしている」「いつも眠そう」「ほっぺがヤバい」「口が開いている」「口が"オ"の形になってる」などのコメントを頂戴してきた。

これらのコメントはもはや自分史ではおなじみの"常連さん"である。

 

その他、顔関連で印象に残っているエピソードを挙げると以下の通りだ。

 

幼稚園のとき、100%健康体の日に登園したところ「おたふく風邪じゃない!?」と不本意ながら周囲に心配をかけた。 

高校時代、期末試験が終わって最高にテンションが上がっている時、友人に「どうしたの!今日、目が開いてるよ!?」と驚かれて、こっちが驚きおののいた。

自分が得意技としていたリスの顔芸を披露した際には、その顔芸を真似しようとした友人が「あれ、で、できない・・・どうやってほっぺた膨らましてるの!?」と不思議がったが、こっちも彼女の悩みを理解できなかった。私のリスの顔芸は、口を小さく尖らしているだけで、頬を膨らます工夫は何ひとつない。

 

私の顎は、一般的な成人に比べて重力に逆らう力が弱いようで、特に睡眠下の無意識状態ではもはや重力のなすがままである。

それゆえ、公共交通機関などで座った状態で眠りに入った際にはピッコロ大魔王の出産さながらの大口を空いてしまうらしく、ふと目が覚めた時に向かいの席に座っていた少年たちが私の口になにか投げ入れるような動作で遊んでいるのを目撃し、気まずい空気が流れたことがある。

実家でピアノのある部屋に寝ていたときは、目覚めた瞬間に傍らのピアノに映る自分の寝顔に驚愕して、この寝顔で人生の様々なチャンスを棒に振るのではないかと本気で悩んだこともある。顎が単独で旅に出ようとしてるんじゃないかってくらいに、口が開いていた。横になっていてもそうなるのは、おそらく月の引力の影響だろう。

 

さらに、私は何かに一生懸命になると鼻の下が伸びる、口が曲がる、などのおかしな表情をする癖があるらしく、習い事でやっているダンスでは常に先生から「変な顔しない!鼻の下伸ばさない!」と注意され、前職における自分の成果物のレビュー会では「ねえ、そのへんな口、やめてくれない?」と上司から懇願され、オポチュニティ氏※にさえ真面目に考え事をしていた私の表情に対して「変な顔するな。仲間がいなくなるぞ。」と助言されるに至った。

 

※オポチュニティ氏:私が1週間で辞めた職場の上司。以下参考。

 オポチュニティ氏の名言 http://t01545mh.hatenablog.com/entry/2013/02/12/214819

 

まあそんな経緯もあって、妬み嫉み僻み以外の何者でもない『名前を言ってはいけないあの感情』によって、美人絶滅しろ、と思わないこともない。

しかし、この顔が私の生活に大きなメリットをもたらしていることも、紛れもない事実なのである。

 

まず、初対面で「ぼーっとしている」「眠そう」な印象を与えると、相手は私に対して大きな期待を抱かない。つまり、周囲からの期待値のハードルが下がる。この状態でちょっと難しいことをこなしたりすると、通常よりも高く評価される。

実際に私は、進学塾の先生にも前職の部長にも「あなたは一見ぼーっとしているように見えて、実はデキるねー!」と声をかけられた。

いわば私の顔は、オートマチック"爪隠す"仕様である。能がそこまでなくても、爪を隠せばあるように見えてしまうからお得感が大きい。

 

また、頬が膨れていることで顔芸の幅が広がっている。前述のリス顔芸も、友人の指摘なしには気付かなかったが、頬が膨れているからこそ実現可能な顔芸であった。

そのほか、「腹話術の人形」など、頬のアドバンテージを利用して編み出された顔芸は数知れず(2つくらい)、なんらかの場を盛り上げるのに一役買っている。

 

さらに、煮詰まった局面で表情がおかしくなる癖が、場の空気を和ませる。決してふざけて変な顔をしているわけではなく真剣ゆえの変顔だから、怒りは買わない。

前述した前職での成果物レビュー会では、かなり厳しい指摘を受けておりピリピリした空気が流れていた。しかし真剣に悩んでいる私の顔を見た瞬間、厳しい指摘をしていた上司本人が笑ってしまった。変顔イリュージョンである。これにより場の空気は一気に緩和され、議論も前に進み、めでたしめでたしということになった。

この時のことを振り返ってみると生産性の面でも貢献度は高く、「会議に一人、変顔社員キャンペーン」が東証一部上場企業で繰り広げられる時代もそう遠くはないかもしれない。

 

油断するといつも口が開いている点については、突発的な鼻使用禁止状態に即座に対応できる。また、ガムテープなどで口を塞がれる状況下に陥ったとして、相手が塞ぎにくい。

というか正直、この点についてのメリットは見い出せないのだが、口を開いて寝ていたことで九死に一生を得るような出来事に遭遇しないとも言い切れない。

 

そんなわけで、私は親からもらったこの顔に感謝し、活用しながら、これからも生きていこうと思う。 

 

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