就職活動の話

私が新卒で就職活動をした時期は、この十数年の中では売り手市場のピークで、近年の就活生が「ふざけんな」と思うであろう程に学生に有利な年だった。

それでもなぜか私にはその恩恵が実感できなかった。

私は修士まで行っていたのだが、自分の同期でも、修士卒だと2〜3社だけ受けて決めたという人が多く、10社と言うと多いねーと言われた時代、私が受けたのは多分30社くらいだったんじゃないかと思う。

当然、業界も多岐に渡った。

 

ある大手生活消費財メーカーには、webで回答する性格診断だけで落とされた。

2回応募のチャンスがあり、2回めはそれなりに反省をふまえて修正をかけたのだが、それが悪かったのか、もはや関係なかったのか、2回とも性格診断だけで落ちた。

「web性格診断だけで落ちる」って、結構グッとくる。

 

「ニッチなニーズを開拓して新商品を開発しつづける」がモットーの生活消費財メーカーは、常に全社員から新商品のアイデアを募集して商品化に繋げているという社風が自分に合っている気がした。

面接までこぎつけてやる気十分だった。

あなたの長所は?という質問には「人と違う発想力があることです!」と自信満々に答えた。

入社して開発したい商品のアイデアはありますか?という質問には、(キターヽ(=´▽`=)ノ )と心の中で思いつつ、「鼻水漏洩防止の、鼻栓を作りたいです!」と胸を張って答えた。

私は鼻炎で、かなり以前からこういう商品を世に出したいと切望していた。

すると面接官は「意外とふつうですね。人と違うことを考えるのが得意と言っていたけど、他にそういう例はありますか?」と想定外にも程がある反応を返してきた。

エッ、エッ、となりつつ、「えーと、割と上手いダジャレとか、けっこう考えてます。」とか言ったら、後日「今後のご活躍をお祈り」された。

 

クリエイティブな仕事がしたいと思って受けた広告代理店では、

「多くの人の心に届くAC(公共広告機構)の広告を作りたいです」と言った結果、

「うちは企業なんで、ビジネス的な思考を持ってください」というコメントと共に不合格をいただいた。

 

その他、グループディスカッションの選考は全部落ちた。グループディスカッションで落ちる理由って本当によくわからなくて悩んだけれど、ここまで全部落ちるということは、まあざっくり集団行動に難ありなんだろうという結論に収束して、"グループディスカッション=ただの落とし穴"として、避けて通ることにした。

 

今思えば、将来のビジョンもやりたいことの軸も明確なっていなくてふらふらしていたし、企業側はそういった点を見抜いていたんだろうな、と思う。

だた、鼻栓を作るというビジョンは結構明確だったのだが、ニーズとシーズがマッチしなかった。

 

色々悩んだ末にインターネット上で無料でできる適職診断みたいなものをやってみたら、

「適職と呼べる職業はこれといってありません。」という、パない結果が出た。嘘のような本当の話である。

なんていうか、おみくじで大凶をひいて「大凶なんて本当に入ってるんだー」というアレに似ている。大凶ひいたことないけど。

インターネット曰く、「ただし、絶対に就いてはいけない職業はあります。警察官・医者・弁護士・裁判官など、他人の人生を左右するような大きな決断を要する職業です。こういう職業に就くとあなた自身がプレッシャーにおしつぶされて潰れてしまいます。」

結構的確だと思う。でも、新たな道標は何も見えてこなかった。

 

そんな中、唯一内定をもらえたのは、就職活動終盤に挑んだIT業界だった。

特に大きくやり方を変えたわけではなかったが、IT業界だけはなぜか順調に事が運んだ。

某web系企業の選考会では、「わら一本から物々交換を繰り返し、最終的に自分の欲しいものを手に入れるストーリーを考えてください」というわらしべ長者を元にしたおもしろい課題が出て、私はその時(正確には覚えていないが)「一本のわらに花が咲いて」みたいな、わらの根本を誤解した内容を記述してしまって帰宅後愕然としたのだが、それでも次の選考に進むことができた。

単純に採用人数が多いから、という確率の問題だったのかもしれないが、求めてもらえるということは自分に合っているんだろうな、と思った。

私を雇用しようと思ってくれた企業には、本当に感謝している。

というわけで、なんとか就職にこぎつけた私は、システムエンジニアとして歩み始めることになった。

 

これから就職活動をする学生さんに、参考になれば幸いである。

 

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